名古屋市中川区の中川文化小劇場にて、ピアノ発表会の撮影を行いました。
今回は客席後方からのメイン撮影に加え、手持ちカメラと舞台袖に設置したリモートカメラを使用し、複数のアングルから演奏の様子を撮影しました。
演奏会撮影で電子シャッターを使用する理由
舞台演出の妨げとなるストロボを使用しないことはもちろんですが、発表会では撮影音にもできるだけ気を配りたいところです。
CASSISBERRYでは、ピアノ発表会をはじめとする舞台撮影では、電子シャッターによる無音撮影を基本としています。ただし、電子シャッターはメリットばかりではありません。ピアノ演奏程度の動きであれば、被写体の動きによるローリングシャッター歪みが大きな問題となるケースは多くありませんが、舞台撮影では照明によるフリッカー、特に画面に現れる横縞に注意する必要があります。
電子シャッターではセンサーを上から下へ順番に読み出していくため、LEDなどの照明が短い周期で明滅していると、その変動を拾って画像に明暗の縞が生じることがあります。特に、電子シャッター時のセンサー読み出し速度が比較的遅い機種では、その影響を受けやすくなります。
そのため当事務所では、実際に撮影するシャッター速度でのテストショットに加え、必要に応じて測定機器を使用して舞台照明の状態も確認しています。
「OPPLE Light Master 4」による舞台照明の測定
今回の撮影では「OPPLE Light Master 4」を使用して実際の舞台照明を測定しました。
測定結果は、
Flicker Index:0
Modulation:約1%
Frequency:約100Hz
約100Hzの周期成分自体は検出されているものの、光量の変動幅は約1%と非常に小さく、電子シャッターでも縞が生じにくい照明環境であることが確認できました。
もちろん、測定値だけで判断するわけではありません。実際に使用するα7RV・α7RIII・α9で電子シャッターによるテスト撮影を行い、撮影画像を確認しましたが、いずれの機種でも目立った縞は確認されませんでした。
電子シャッターでの舞台撮影では、使用するカメラだけでなく、会場の照明との組み合わせによって結果が変わります。そのため「この機種なら大丈夫」と一律に判断するのではなく、その日の照明環境を実際に確認することが重要だと考えています。
舞台袖にはリモートカメラを設置
今回は舞台袖にもリモートカメラを設置しました。
リモートカメラの大きな利点は、本番中にはカメラマンが立つことのできない位置から撮影できることです。たとえばピアノ奥から客席方向を狙えば、客席側から撮影する写真とは大きく異なるアングルを得られます。
一方で、ピアノ奥にカメラを置くと客席から機材が目立ちやすくなります。発表会はあくまで演奏者が主役ですから、撮影できる写真だけを考えてカメラを置けばよいわけではありません。
舞台上手からピアノ越しに演奏者を狙う、下手側からバックショットを撮影する、斜め方向からピアノと演奏者を含めて舞台全体を収めるなど、得られる画と同時に、客席や演奏者から機材がどう見えるかにも気を配りながら設置位置を決めています。
今回リモートカメラとして使用した機種は、電子シャッター時のセンサー読み出しが決して速い機種ではありません。しかし事前のテストでフリッカーによる問題がないことを確認できたため、こちらも電子シャッターによる完全無音で運用しました。
Bluetoothリモコンもテスト
リモートカメラの操作には、普段使用している2.4GHz帯のリモートシャッターに加え、今回はテストを兼ねてソニーのBluetoothリモコン「RMT-VP2」も併用しました。
RMT-VP2の通信距離は公称約10mですが、今回は約16m離れた位置から使用し、本番中の全カットで問題なくシャッターを切ることができました。さらにテストでは、客席最後列から舞台袖の受信側まで約25mある位置からも操作できています。
今回は受信側までの間に大きな遮蔽物がなく、通信条件が良かったことも影響していると思われますので、常にこの距離で使用できるという意味ではありません。それでも、Bluetoothリモコンが舞台撮影のリモートカメラ用としてどの程度実用になるのかを確認する、良いテストになりました。
固定と手持ち、それぞれの役割
客席後方には、ピアノ全体と演奏者を収めるメインカメラとしてα7RVを設置しました。こちらは三脚に固定し、基本となるアングルを安定して撮影します。
一方、手持ちカメラにはα9を使用。α9は電子シャッター使用時でもファインダー像が途切れないブラックアウトフリー撮影が可能なため、演奏者の動きや表情を追いながら撮影する用途では扱いやすいカメラです。
今回、手持ち撮影用の望遠ズームは、従来使用していたSEL70200GMからSEL70200GM2へ入れ替えました。約200g軽量になったことで、長時間の発表会でも手持ちでの取り回しがしやすくなっています。舞台撮影では同じ位置でカメラを構え続ける時間も長いため、こうした機材の軽量化は数字以上に助けになります。
メインカメラ、手持ちカメラともに電子シャッターを使用し、演奏中は無音で撮影しています。
固定カメラではピアノ全体を含めた基本となるカットを押さえ、手持ちカメラでは演奏者を少し大きく捉えたり、表情や手元を意識したカットを加えたりと、同じ演奏の中でも写真に変化をつけていきます。
また、連弾では客席正面から撮影すると、座る位置や体格によって2人の演奏者が重なり、一方の顔が見えにくくなることがあります。
そのため、2人の表情を同時に収めたい場面では、手持ちカメラで少し左右へ撮影位置を変えることもあります。
ただし、本番中に客席内を大きく移動すると鑑賞の妨げとなるため、基本となるカットは固定カメラで確保しつつ、必要な場面だけ手持ちカメラで位置を調整するなど、できるだけ移動を少なくしながら撮影しています。
発表会撮影で大切にしていること
発表会撮影では、機材や撮影方法だけでなく、演奏や鑑賞の妨げにならないことも大切です。
シャッター音を出さないこと、客席内を必要以上に移動しないこと、舞台上の機材をできるだけ目立たせないこと。そのうえで、演奏者の表情や手元、ピアノを含めた舞台全体など、発表会の様子をさまざまな角度から残せるよう撮影しています。
今回の中川文化小劇場は、客席の傾斜が比較的なだらかな会場でした。ピアノの鍵盤や演奏者の手元を見下ろす角度を確保するには客席後方まで下がる必要がある一方、後方へ下がるほど舞台までの距離も長くなるため、撮影位置と使用する焦点距離のバランスを考える必要があります。
会場の広さや客席の傾斜、舞台とピアノの配置、照明環境などは会場ごとに異なります。そのため、事前の確認と当日のテストを行い、それぞれの条件に合わせて撮影方法を組み立てながらの撮影となりました。
CASSISBERRYでは、名古屋市をはじめ愛知県や岐阜県など、東海エリアでの発表会・演奏会撮影を承っています。
撮影内容や料金については「舞台撮影のご案内ページ」をご覧ください。
Equipment
Body: α7RV / α9 / α7RIII
Lens: FE 70-200mm F2.8 GM OSS II / FE 85mm F1.8 / FE 24-70mm F2.8 GM